事故車両の価格算定
交通事故物的損害については、物理的全損の場合、また経済的全損の判断のために、事故車両の価格算定が問題となります。
事故に遭ったっす。
それは大変。怪我はなかったの?
なかったっス。
でも、愛車が壊れたっス。
だから、死んだも同然っス。
きちんと賠償金はもらわんといかんぞ。保険会社とその辺の話しはしているのか?
してるっす。新しくラディッシュ号を買うには中央大根が100本は必要なのに、50本しか払わんと言ってるっス。たぶん算数ができないんス。
だが、中央大根100本というのは新車の値段だろ?あながち間違いとは言えないかもしれないぞ。
ど、ど、どういうことっスか?
ラデイッシュ号は中央大根100本ないと買えないっす。
中古車はどうかしら。中古なら、中央大根50本でも買えるんじゃないかしら。
ま、間違いじゃないとか、中古とか、アンタら保険会社の手先だったっスか!
落ち着くのだ!
事故に遭って10年乗った車が新車になるのもおかしい話しだろう。
はっ!
そ、そうか、冷静に考えれば新車になるのはおかしいかもしれないっス・・・
交通事故により,所有する自動車が修理不能な場合(全損),修理費用が自動車の価値を上回る場合(経済的全損),自動車の価値により賠償額を決めていきます。
自動車の価値は,レッドブックという中古車の客観的な取引価格を掲載した冊子に基づいて算定していくのが通例です。
レッドブックは,定期的に刊行され,刊行された冊子ごとに対応する時期が定められています。交通事故賠償は原則的に交通事故時の自動車の値段を問題とすることから,交通事故時に対応したレッドブックを参照する必要があります。
ネット上で被害車両と同一車種の実際の取引価格などが判明する場合もありますが,レッドブックとは価格が異なる場合もあります。しかし,基本的には,レッドブックが優先されるのが実務の扱いです。なぜなら,レッドブックは多数のデータをもとに分析しており客観性が担保されているのに対して,ネット上の個々の取引ひとつを取り出しても,客観性に劣ると考えられるからです。
もっとも,レッドブックに該当車両の記載がない場合もあります。たとえば,事故時から起算して10年以上前に販売された車両などは,基本的にレッドブックに記載がなく,レッドブックからは事故時の取引価格が明らかになりません。
この場合,裁判所の基準はまちまちです。たとえば,減価償却の考え方による場合(平成7年東京地裁),購入価格・走行距離・登録からの経過年数などから総合的に判断する場合(平成16年東京地裁)などがあります。
この場合は、取引価格や,購入価格,車両の状態など,当事者がそれぞれ自動車の価格算定に有利な要素と不利な要素をたたかわせ,そのうえで,裁判所が双方の主張をもとに,自動車の価格を決していくのがひとつの合理的な算定といえそうです。
所有権留保と物的損害
オートローンなどで所有権が留保された車両について、損害賠償請求権は原則的に事故時の車両所有者であるローン会社等に帰属します(最二判昭和41年6月24日集民83号39頁)。
ただし、修理費を使用者が支出した場合(東京地判平成26年11月25日交民47巻6号1423頁)、ローンを完済した場合(東京地判平成2年3月13日判例時報 1338号21頁)など、一定の条件下で例外的に使用者に損害賠償請求権を認める裁判例もあります。
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