盗品等に関する罪

盗品等に関する罪(財産犯)

①盗品等に関する罪の処罰根拠

「財産に対する罪…によって領得された物」を無償又は有償で譲り受け、運搬、保管し、または、有償処分のあっせんをしたものは罰せられる(256条1項、2項)。256条は、犯人蔵匿の章でなく、財産犯として定められていることから、盗品等を奪われた者の追求権を侵害する点に処罰根拠があると解する。もっとも、追求権を民事上の物権的請求権とのみ捉えることは妥当でなく(最判昭和26年1月30日参照)、財産犯により生じた(違法)状態を解消しうる地位と捉えるべきである。

②盗品等有償処分あっせん罪

盗品等有償処分あっせん罪については、あっせん行為のみでは追求を困難にしたといえず、あっせんに基づく契約の成立が必要とも思われる。しかし、追求権を違法状態の解消を求める立場と解すれば、本犯を援助し違法状態を維持するあっせん行為に当罰性を認めることも可能である。
注1)なお判例(最判平成14年7月1日)は、被害者に有償で売却する契約のあっせんも本罪を構成するとしている。これは、無償で取り戻せるのが本来であるところ、有償の取り戻しを要求し、本来の追求権を実質的に侵害するからと考えられる。

③盗品等運搬罪

盗品等を被害者のところへ運搬する行為は、被害者の追求権を侵害するといえず、盗品等運搬罪を構成しないともいえそうである。しかし、返還を条件に被害者から多額の金品を得ようと被害者の下へ盗品等を運ぶ行為には、盗品等運搬罪が成立する(最決昭和27年7月10日)。これは、多額の金品と引き換えとすることにより、被害者の追求権を実質的に害しているからである。

④盗品等保管罪

盗品等を保管する行為は、盗品等保管罪の客観的構成要件に該当する。しかし、「罪を犯す意思のない行為は、罰しない」(38条1項)。したがって、盗品と知らずに保管していた場合は本罪は成立しない。知情後、放置した場合は、盗品の変換が不可能なばあい、法律上返還を拒否できる場合(留置権等?)以外は、盗品等保管罪が成立する。

⑤盗品等に関する罪と狭義の共犯

財産犯の正犯(共同正犯を含む)は、本犯により盗品等罪の法益侵害を評価されつくしているから、盗品等に関する罪を犯しても不可罰的事後行為として罰せられない。しかし、狭義の共犯においては、共犯行為によって盗品等罪に基く法益侵害が評価され尽くしてるとはいえない。したがって、狭義の共犯は盗品等罪の主体足りうる。
注1)なお、財産犯の本犯が行った盗品等罪に関与した場合、本犯は不可罰とされるが関与者には盗品等罪が成立する(最決昭和35年12月22日)。
注2)このことの帰結として、関与行為が幇助や教唆に過ぎない場合、正犯なき共犯が成立する余地もあろう。なぜなら、正犯たる本犯者の盗品等罪も違法であり、ただ、その違法性が評価しつくされているとして、不可罰とされるのである。とすれば、制限従属性の立場からも、正犯は不可罰だが、構成要件に該当し、違法ではあるとして、正犯なき盗品等罪幇助、教唆を認めうる。

親族間の特例

①特例の趣旨

257条1項の趣旨は、盗品等罪の事後従犯的側面を重視し、財産犯と、盗品犯との間に親族関係がある場合、盗品等罪にでないことを国家が期待できない点にある。
注1)257条1項を、244条と同様の趣旨に解し、財物の占有者および所有者と、盗品等罪の犯人との間に親族関係がある場合に政策的に法は家庭に入らずの趣旨から、一身的処罰阻却事由を定めたと解する見解もある。しかし、盗品犯と被害者に親族関係があることはまれであるし、257条が244条と別に設けられた意味がなくなるとの批判がある。