刑事弁護について

刑事弁護は,主に,被疑者段階における刑事弁護と被告人段階における刑事弁護に分けて考えることが出来ます。

被疑者段階における刑事弁護と,被告人段階における刑事弁護は大きくその性質が違います。 被疑者段階における刑事弁護は,捜査機関との対話・折衝を通して捜査機関による人権侵害を防ぎ,起訴・不起訴の別を中心課題として弁護を進めていきます。被告人段階における刑事弁護は,刑事訴訟における法廷弁護活動が中心になります。

被疑者段階における刑事弁護とは

被疑者段階における刑事弁護とは,被疑事件を公判請求するや否やを決するための捜査活動が行われている段階の弁護活動を指します。公判請求(起訴)するかしないかが決定されていない段階における刑事弁護であり,起訴・不起訴を中心課題として刑事弁護を進めていくことになります。

被疑者段階の刑事弁護においては,逮捕・勾留など身体拘束を伴う場合と,逮捕されない,逮捕されたが勾留には至らない,勾留までされたが後に身体拘束が解かれたなど,身体拘束を伴わない場合とがあります。

身体拘束を伴う被疑者段階における刑事弁護については,時間制限が定められ,勾留は最大で20日間しか認められません。したがって,被疑事件が一つしかない場合は,身体拘束対象の事件は最大でも,20日間の勾留期間が過ぎれば,被疑者の身体拘束を解くか,公判請求して勾留を維持しなければならないことになります。これに対して,身体拘束が伴わない場合は,明確な時間制限は無く,捜査が十分に完了した時点で,起訴・不起訴の別などを決していくことになります。いずれにしても,公判請求をするや否やを決するための捜査活動を行い,捜査活動に基づいて得られた情報・証拠をもとに,起訴・不起訴の別を決していくことになります。

身体拘束下の事案,身体拘束がない事案いずれのケースでも,不起訴の獲得を目指して,起訴・不起訴を決定する権限を有する検察官と折衝していくことになります。この場合,犯罪を実際に犯している場合と,犯していない場合で,獲得を目指す不起訴の内容は若干異なることになります。犯罪行為を犯していない場合獲得を目指す不起訴理由は,嫌疑不十分による不起訴となります。もっとも,嫌疑は十分だが,起訴猶予するという内容の不起訴であっても,効果は変わらないことになります。これに対して,犯罪行為を犯している場合は,諸般の事情から,起訴を猶予してもらうよう,起訴猶予の獲得を目指して,検察官と折衝していくことになります。たとえば,前科がないことや,被害者と示談できている事等,有利な事情を拾って,犯罪は行ってしまっているが起訴は猶予してほしい旨を検察官に説明,折衝し,弁護人としての意見を書面や口頭で伝えていくことになります。

被告人段階における刑事弁護とは

被告人段階における刑事弁護には,刑事訴訟における法廷弁護活動が中心となります。刑事訴訟の審級に従うと,一審における刑事弁護,控訴審における刑事弁護,上告審における刑事弁護に大別することが出来ます。控訴審における刑事弁護,上告審における刑事弁護は,日本の刑事訴訟では一審段階の刑事訴訟と大きく性質を異にします。民事訴訟のように控訴審が一審の続審とされているわけではなく,刑事訴訟は控訴審段階から事後審という建前で審理されます。事後審は,証拠に基づいて再度審理を行うのではなく,すでに行われた一審の審理判断に誤りがないかを事後的にチェックする手続きになります。したがって,刑事訴訟においては,一審とその後の上訴審は性質を大きく異にすることになるのです。ここでは,一審における刑事弁護について,述べていきたいと思います。

一審における刑事弁護も,裁判員裁判事件と,非裁判員裁判事件などに分けて考えることが出来ます。また,犯罪を認める場合の刑事弁護(情状弁護を中心課題とするもの)と,犯罪を認めない場合の刑事弁護(いわゆる否認事件)においても,刑事弁護活動の内容は異なることになります。

まず,身体拘束に対する依頼人の事件保護の側面でみたとき,被告人段階の刑事弁護においては,裁判員裁判事件であろうと,非裁判員裁判事件であろうと,身体拘束がある場合,保釈の獲得に向けた刑事弁護を行うことが,法律上可能になります。被疑者段階における身体拘束に対する異議申し立てよりも,保釈請求が認められる確率は高く,依頼者の身体拘束を解くうえで,重要なスキームになります。もっとも,保釈が認められても,裁判所が指定する金額の保釈金を裁判所に納めなければ,身体拘束は解かれません。

次に,被告人段階の刑事弁護においては,公判期日が指定されます。公判期日は,刑事訴訟の審理などを行う期日で,裁判所が指定します。この公判期日における法廷弁護活動が,被告人段階の刑事弁護における中心課題となります。被告人段階の刑事弁護は,起訴された被告事件について,公判廷において弁護活動を行い,可能な限り有利な判決の獲得を目指すことが主な活動の内容となります。可能な限り有利な判決とは,犯罪を行っていない場合,犯罪の成否を争う場合(いわゆる否認事件など)は,無罪の獲得になります。また,犯罪を行っている場合は,責任能力などを争い無罪の獲得を目指す,可能な限り有利な量刑であったり,法的に執行猶予を付せる場合は,執行猶予の獲得などを目指すことなどが中心課題になります。

当事務所弁護士齋藤理央は,上告事件から控訴事件,裁判員裁判など多様な刑事事件の処理経験があります。もし,刑事手続きでお困りの際は,御気軽にご相談ください。