治療費
必要かつ相当な範囲で請求できます。
治療費は、消極損害の代表格で原則的に被害者が負担した治療費は損害賠償の対象となります。ただし、請求できるのは、必要かつ相当な治療、社会通念上妥当な範囲の治療に限定されます。これを逸脱した治療のために負担した治療費等は、不法行為との因果関係を欠くなどの理論構成で請求が認められないのが原則です。
治療費の時的限界
治療費が認められるのは、原則的に治療の終期、症状固定の時期までです。医師が症状固定と判断した以上、症状は治癒しているか、或いは、不法行為前の状態に戻らないとしても、その症状は後遺症として固定化しているものと考えられます。したがって、原則的に請求できる治療費は、症状固定の時点までとなります。
将来治療費
もっとも、判例上ケースによっては将来の治療費も不法行為に基づく損害として認められています。その認容の基準は定型化しているとまでは言い難く、必要な治療と言えるか、妥当な出捐として想定されるかなど、不法行為の態様や、症状、負傷部位など各種ファクターに照らして総合的に判断しているものと考えられます。
将来治療費とライプニッツ係数
将来治療費が認められた場合、ライプニッツ係数により補正がされる場合があります。ライプニッツ係数による補正とは、簡単に言えば利息の相殺のようなイメージです。つまり、将来治療費の賠償とは、将来支出して支払う金銭を現在において先に弁済を受けることを意味します。このことの裏返しとして将来支出する金銭を現在受け取ることの利益を、利息分を引いた金額の弁済を受けることで調整することになります。このように将来治療費の請求においてはライプニッツ係数による減額調整が行われることを念頭に置いておく必要があります。
治療費の請求をいつ行うか
治療費の請求は、原則的に治療費を被害者が出捐し、その出捐後に加害者に請求するのが法の建前です。また、毎回請求すると煩雑であるため、症状固定後、治療費の総額も決定した場合に全額をまとめて請求するのが通常です。もっとも、交通事故などのケースにおいて保険会社が対応する場合、治療費は直接保険会社が医療機関に対して負担する等、保険会社の自主的な対応によって被害者保護が図られているケースもあります。実際にも、治療費を被害者が一律に立替え負担することは被害者を著しく不利な立場に置きかねません。しかし、現状では保険会社の医療機関に対する治療費の直接負担は保険会社の善意の対応という側面が強く、保険会社がこれを拒否した場合に法的に強制することは難しいのが現状です。
通院交通費
通院に交通費が必要となった場合、積極損害として必要かつ相当な範囲で賠償を請求できます。
自家用車での通院
往復のガソリン代を、1キロ15円で算定し、算出された金額を通院交通費という損害費目として請求できます。
公共交通機関
必要かつ相当な範囲として合理性が認められるものは実費を請求できます。