共犯と身分を巡っては、刑法65条の解釈が問題となります。刑法65条の解釈を巡っては様々な見解の対立があります。
刑法第65条条文
- 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
- 身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。
刑法65条の解釈
①刑法65条1項及び2項の解釈
65条1項は身分犯の共犯について定めています。ここで、「身分」とは、一定の犯罪行為に関する犯人の特殊の地位、状態を指すものと解されます。そして、真正身分犯とは身分を有することにより初めて可罰性が認められる犯罪をいい、不真正身分犯とは、身分がなくとも可罰性は認められるが、一定の身分を有する場合、より重く罰せられる犯罪をいいます。文理上素直に、65条1項は真正身分犯の成立と科刑を、65条2項は不真正身分犯の成立と科刑を定めた条文と解することができます。
しかし、判例は業務上横領に非身分者が加攻した場合、業務上横領罪の業務は不真正身分であり、占有者たる身分は真正身分と解し、65条1項の適用により、非身分者には業務上横領罪が成立するとしたうえで、65条2項の適用により横領罪の科刑としたものがあります。
②共同正犯と65条1項
構成身分を有さない者が身分者と共謀して犯罪を実行した場合共同正犯として問責されるのでしょうか。65条1項に言う「加攻」に、共同正犯が含まれるだろうかが問題となります。思うに、共同正犯も身分者の身分を介して自己の犯罪として法益侵害に因果を及ぼすことが可能であり、65条にいう「加攻」には共同正犯も含まれるものと解します。
③共同正犯と65条2項
65条2項の共犯に共同正犯が含まれることに争いはありません。共同正犯間に非身分者がいる場合、65条2項の適用により、身分者には重い犯罪が、非身分者には軽い犯罪が成立すると理解されます。
④狭義の共犯と不真正身分犯
ⅰ.正犯が身分を有し、加担犯が身分を有さない場合、加担犯には65条2項により、軽い犯罪の幇助(62条1項)、教唆(61条1項)が成立します。
ⅱ.では、正犯が加減身分を有さず、加担犯が身分を有する場合は、どうでしょうか。
この点も、65条2項の適用により、正犯に軽い犯罪本犯が、従犯に重い犯罪の幇助犯、教唆犯が成立するものと解しまチュー。
以上の結論は、加減身分が責任身分であり、構成身分が違法身分と解されることから、違法は連帯的に、責任は個別的に解する制限従属性説の考え方とも適合的でチュー。
刑法の共犯と身分の論点について。
刑法65条を巡っては様々な見解があります。
ここでご紹介しているのも一例なので、他の見解も気になるときは探してみてね。