原発事故賠償もその性質は不法行為に基づく損害賠償請求であり、原則的には民法724条(※1)による消滅時効にかかるところ、原発時効特例法により、時効及び除斥期間についての特例が定められています。
原発時効の特例法による延長
原発時効特例法は、「特定原子力損害の被害者」のうちに今なお不自由な避難生活を余儀なくされその被った損害の額の算定の基礎となる証拠の収集に支障を来している者が多く存在すること、個々の特定原子力損害の被害者に性質及び程度の異なる特定原子力損害が同時に生じその賠償の請求に時間を要すること等により、特定原子力損害に係る賠償請求権の行使に困難を伴う場合があることに鑑み、特定原子力損害の被害者が早期かつ確実に賠償を受けることができるようにするための体制を国が構築するために必要な措置について定めるとともに、特定原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例を定める点にあります(原発時効特例法1条)。
原発時効特例法3条により、原発事故の消滅時効は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から10年に延長されます。また、除斥期間も、不法行為の時から20年経過したときではなく、損害が発生した時から20年を経過したときまで、延長されます。
(消滅時効等の特例)
特定原子力損害に係る賠償請求権に関する民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百二十四条の規定の適用については、同条前段中「三年間」とあるのは「十年間」と、同条後段中「不法行為の時」とあるのは「損害が生じた時」とする。
原発時効特例法第三条
東電に対する原発賠償請求代理業務
(趣旨)
第一条 この法律は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故による災害が大規模で長期間にわたる未曽有のものであり、特定原子力損害(当該事故による損害であって原子力事業者(原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)第二条第三項に規定する原子力事業者をいう。)が同法第三条第一項の規定により賠償の責めに任ずべきものをいう。以下同じ。)を被った者(以下「特定原子力損害の被害者」という。)のうちに今なお不自由な避難生活を余儀なくされその被った損害の額の算定の基礎となる証拠の収集に支障を来している者が多く存在すること、個々の特定原子力損害の被害者に性質及び程度の異なる特定原子力損害が同時に生じその賠償の請求に時間を要すること等により、特定原子力損害に係る賠償請求権の行使に困難を伴う場合があることに鑑み、特定原子力損害の被害者が早期かつ確実に賠償を受けることができるようにするための体制を国が構築するために必要な措置について定めるとともに、特定原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例を定めるものとする。
(早期かつ確実な賠償を実現するための措置)
第二条 国は、特定原子力損害の被害者が早期かつ確実に賠償を受けることができるよう、国の行政機関における特定原子力損害の賠償の円滑化のための体制の整備、紛争の迅速な解決のための原子力損害賠償紛争審査会及び裁判所の人的体制の充実、原子力損害賠償支援機構による相談体制及び情報提供体制の強化その他の措置を講ずるものとする。
(消滅時効等の特例)
第三条 特定原子力損害に係る賠償請求権に関する民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百二十四条の規定の適用については、同条前段中「三年間」とあるのは「十年間」と、同条後段中「不法行為の時」とあるのは「損害が生じた時」とする。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律
(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
民法第724条
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
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