開廷表の記載に準じ開廷日時、開廷場所、事件番号及び当事者名等をインターネット投稿した行為がプライバシー権侵害に当たると判断された事案

令和 3年 9月10日東京地裁判決(令3(ワ)15950号・発信者情報開示請求事件)ウェストロー・ジャパン(2021WLJPCA09108009)は、東京家庭裁判所に掲載された開廷表の記載に準じ開廷日時、開廷場所、事件番号及び当事者名等をインターネット投稿した行為がプライバシー権侵害に当たると判断された事案です。

東京地方裁判所は、下記のとおり述べてプライバシー権の侵害を肯定しました。開廷表は公開のものであり、さらに閲覧制限を申し立てた場合は当事者名なども墨塗になりますので、違法という判断はやや厳しい印象があります。しかしながら、離婚事件という私事性の高さなども影響してプライバシー権侵害という判断になったのでしょう。

情報発信と人格権の関係を考える上で参考になる裁判例だと思われます。

(1) 本件投稿内容は,原告がその妻との間で係争中の東京家庭裁判所の離婚請求訴訟事件の開廷日時及び開廷場所を,事件番号及び当事者名等とともに記載する形式のものであり,裁判所に備え置かれた開廷表の記載に準じるものである。
 本件投稿には原告及び原告の妻の氏名が記載されており,原告に関する投稿であると分かり,一般の読者の普通の注意と読み方を基準としてみた場合,本件投稿の上記記載内容は,原告が妻と離婚係争中であることを摘示するものである。そして,一般に,夫婦が裁判所において離婚係争中であるとの事実は,公開を欲しない私生活上の秘密に関するものといえる。

(2) 確かに,裁判所の開廷表は,裁判の公開の要請から裁判所内に備え置かれ,一般の閲覧に供されているほか,訴訴訟記録は一般に閲覧が可能であるから(民事訴訟法91条1項),その限りにおいて,本件投稿に記載された情報は,第三者が知り得るものではある。しかし,裁判を公開する趣旨は,これにより裁判が公正に行われることを制度として保障し,裁判に対する国民の信頼を確保するところにあり,こうした制度的要請を超えて,係争中の当事者のプライバシー権が保護されないものとなるわけではない。本件投稿に記載された情報は,実際に裁判所に赴いて開廷表を確認したり,訴訟記録を閲覧したりしなければ通常は知り得ない情報であり,その限度では未だ一般に知られていない事柄ということができる。本件投稿は,それを広くインターネットを通じて一般に公開し,原告がその妻と裁判所において離婚係争中である事実を明らかにするものであり,この点において,原告のプライバシー権を侵害するものと認められる。

令和 3年 9月10日東京地裁判決(令3(ワ)15950号・発信者情報開示請求事件)ウェストロー・ジャパン(2021WLJPCA09108009