交通事故で正義を実現する手段は,賠償金額を可能な限り正当な金額に近づけることです。
しかし,「正当な金額」とは,いったい幾らくらいの金銭なのでしょうか?
交通事故によって生じた怪我などの不利益をお金に換算することは,正解のない難題です。
しかし,法律が損害を金銭で賠償することが一つの正義の有り様と明言している以上,誰かが損害額を算定しなければなりません。
そして,あくまで法律の世界では,最終的に裁判所が「正当な金額」を決めることになります。
しかし,裁判所は被害者が何人であっても,平等な判断をしなければなりません。また,案件ごとに「正当な金額」に開きがあっては困ってしまいます。
そこで,裁判所は「正当な金額」を正確に判定できるように,一定のモノサシで損害を金銭に換算していきます。
そのモノサシが,裁判所基準と言われるモノサシです。
※しかし,裁判所は自分たちのモノサシを表だって公開しているわけではありません。そこで,裁判所基準をさまざまな判例などから分析して,おそらくこうだろうと割り出した基準が弁護士会基準などと呼ばれる基準なのです。したがって,両者は元は同じものなので,実際には異なる点が多少あるとしても,それほど大きな差異はありません。
これに対して,交通事故損害賠償実務には,まったく異なる観点から作成されたもう一つのモノサシがあります。
それが,任意保険基準とか,保険会社基準と言われるモノサシなのです。
※ 保険会社は自分たちで交通事故の示談交渉をはじめたことから,数ある交通事故の示談交渉を自分たちで行う必要が生じました。そこで,保険会社も数ある交通事故に同じような示談金額を算定し,効率よく交渉していく必要が生じます。この点から,保険会社も任意保険基準などと呼ばれる保険会社独自の会社ごとの基準を作り出していったのです。
保険会社は,交通事故ごとに支払う損害賠償金額が低い方が会社にとって利益になります。
もっといえば,保険会社は示談金額を低く抑えるためにわざわざ自分たちで交渉を行なっているという指摘さえ可能です。
よって,保険会社が示談金額を算定するためのモノサシをつくるとすれば,それは,第三者である裁判所がつくったモノサシより金額を低めに算定するモノサシであることは,むしろ当たり前のことなのです。
そして,現在の交通事故実務において,交通事故被害者の皆様が最初に目にする示談金額は,保険会社のモノサシで金銭に換算された損害額であることが通常です。
一度,皆様が交通事故で被った損害を,第三者である裁判所がつくった公正なモノサシで測ってみる必要があるのではないでしょうか?
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