沖縄本島北部山原(やんばる)は、自然公園法(「優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的とする」(自然公園法1条)法律)に基づき、環境大臣により、やんばる国立公園として、国立公園に指定されています。国立公園は、環境大臣が、関係都道府県及び中央環境審議会の意見を聴き、区域を定めて指定します(自然公園法5条1項)。
やんばる地域の自然環境
平成16年10月14日福岡高裁那覇支部判決(平15(行コ)3号 違法公金支出差止等請求控訴事件)は、やんばるの自然環境について下記のとおり認定しています。
「 沖縄本島の最北端,北緯26度,東経128度付近に位置し…これら沖縄県北部地域の最北部…にまたがる山岳地域を通称やんばる(山原)という。
やんばるは,イタジイを主とする亜熱帯常緑広葉樹に覆われており,その土壌は国頭マージと呼ばれる赤土である。
やんばるには,沖縄本島最高峰の与那覇岳(498メートル),西銘岳(420メートル),伊湯岳(446メートル)などの大小幾多の山々が中央部を縦走して連なり,海岸近くまで丘陵地となっている。山々には無数の沢が流れ,大小の多くの河川となって海に注いでいるが,河川勾配が急峻で,流路面積が短い河川が多く,そのため渓流が複雑な地形を形作り,亜熱帯の渓流に特徴的な渓流植物群落が発達している。これらの植物は各々渓流により隔離され,固有種の分化が多い。
やんばるの年間降雨量は,与那覇岳山頂付近では3000ミリメートルを超えるなどの多雨地域であり,大量の雨水をスポンジのように吸収して貯えるイタジイの自然林が,県民の水瓶,生活用水の供給源として極めて重要な機能を果たしてきた。
やんばるには,多くの固有種が分布生息しており,文化財保護法による天然記念物,種の保存法・同法施行令17条所定の希少動植物種,環境庁編日本版レッドデータブック「日本の絶滅のおそれのある野生生物」掲載の絶滅危惧種・危急種・希少種が多数見られ,やんばるは,その種の多様性,希少性という点で国際的に有名であり,「東洋のガラパゴス」ともいわれている。やんばるにだけ生息する動植物は,現在判明しているものだけで192種に及び,これらの生物を育んできたのが,イタジイを主とする亜熱帯常緑広葉樹林である。イタジイの森は,そこに生息する生き物たちを台風や冬の北風,潮風から守り,夏の強い日差しを和らげ,これら希少動植物の生息に最適な温暖湿潤で安定した環境を保つ役割を果たしてきた。
やんばるの固有種の代表例といえるのは-①「ヤンバルクイナ」国指定天然記念物,種の保存法希少野生動植物種に指定され,絶滅危惧種である。世界中でやんばるのみに生息する。飛翔力のないこの鳥は,木立の密度が高く,樹冠が鬱閉し,林床にも植物が密に生息する沢や谷沿いに生息し,明るいところには稀にしか現れないといわれている。②「ノグチゲラ」国指定特別天然記念物,種の保存法の希少野生動植物種に指定され,絶滅危惧種である。世界中でやんばるの原生的自然林の中だけで生息する一属一種のキツツキで,営巣適木は樹齢50年以上のイタジイの大木や老木で,傾斜した部分(地表に対し60から75度)を巣として利用し,同じ巣は再度使用しないなど多くの条件がある。生息数がわずか90羽前後(1990年時点)と推定されており,個体群を維持できるかどうか危惧されている。③「ヤンバルテナガコガネ」国指定天然記念物,種の保存法の希少野生動植物種に指定され,絶滅危惧種である。日本最大の甲虫類で,やんばるの自然林だけに生息し,学術上は「生きている化石」の一つとされている。幼虫は老木や古木のウロ(樹洞)の中の腐食土を食べて成長する。やんばるの開発に伴い,ウロのある古木が急速に失われている現在,絶滅が最も心配されている種である。④「オキナワトゲネズミ」やんばるのみに生息する固有亜種で,学術的に貴重な動物とされている。国指定天然記念物,危急種。⑤「リュウキュウヤマガメ」やんばる,久米島,渡嘉敷島だけに生息する固有亜種。国指定天然記念物,危急種。⑥「ホントウアカヒゲ」沖縄本島と慶良間諸島に生息する固有亜種の留鳥。国指定天然記念物,種の保存法希少野生動植物種,危急種-である」
環境を巡る法律問題
自然環境や生活環境など環境を巡る規制や、環境に対する侵襲を軸とする紛争解決などの法律事務を取り扱っています。
ヤンバルクイナ
そのやんばるの固有種の代表例として挙げられているのが、日本で唯一飛行能力を持たない鳥類である、ヤンバルクイナです。
やんばるくいな。生きた個体を見てきました。やんばるはなかなか遠いですが、生きたヤンバルクイナを見れたのですから見に行けて良かったです。
なお、見た個体は野生ではなく、卵から保護され、人工孵化されたきょんきょんという名前の個体です。展示施設に入っており、常時その姿を見ることが出来ます。施設入場料は500円で、野生ではありませんが、人慣れしており、かなり近づいてきてくれます。行ったタイミング良く、丁度エサの時間の5分前 でした。エサは午前11時5分でした。トキ用に開発されたドッグフードのようなエサを一回に7粒与えられていました。ヤンバルクイナ用にエサを開発したいところだが、予算不足でトキ用に開発されたエサを代用しているとのことでした。ヤンバルクイナにはかなり高カロリーで太りやすいので注意しているとのことでした。野生のヤンバルクイナはかなりの雑食で、貝、虫、木の実など色々食べているようです。
同施設内にくいなカフェというカフェ施設も併設されています。そこのアイスクリームがおいしかったので、お薦めです。
野生のヤンバルクイナの観察
野生のヤンバルクイナですが、見るのは至難だろうと思っていましたが、かなりの確率で見れるようです。ただし、時期は選ぶ必要があり、5月〜6月頃が良いようです。沖縄観光にも適した時期ですし、野生のヤンバルクイナをみれるなら、その時期に合わせて沖縄行きを検討しても良いかもしれないですね。
見れる場所は、やんばる学びの森、宿泊者限定、3800円のちょこっとバードウォッチングというコースで5-6月はかなりの確率でヤンバルクイナを見られるようです。5-6月は道路上などにも頻繁にヤンバルクイナが出るみたいですが、やはりプロのガイドをつけた方が確率はグンと上がると思います。
なお、やんばる学びの森のもう一つのバードウォッチング6000円とは、別の内容ということでした。ちょこっとバードウォッチングの方がヤンバルクイナに特化しているようです。ちょこっとバードウォッチングは宿泊者限定ですから、やんばる学びの森に宿泊する必要があります。バードウォッチングは、宿泊者でなくても、申し込み可能です。ただ、両方出発は夜明け前ですから、事実上、宿泊しないとかなりハードかもしれません。
やんばる学びの森はかなり奥深い森の中にありますので、最寄りの宿泊施設でも真夜中のやんばるの森の道路を20kmくらい走行することになります。宿泊料金も特別他より高いわけではなく、やんばる学びの森に宿泊した方が便利だと思われます。
ヤンバルクイナと法律
文化財保護法
ヤンバルクイナは文化財保護法により※天然記念物に指定されています。
種の保存法
国内希少野生動植物種の指定
ヤンバルクイナは、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令 (平成五年政令第十七号)」 1条1項及び別表1により、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」第四条第三項の「国内希少野生動植物種(その個体が本邦に生息し又は生育する絶滅のおそれのある野生動植物の種であって、政令で定めるもの)」に指定されています。
ヤンバルクイナの捕獲等の禁止
したがって、ヤンバルクイナの生きている個体は、捕獲、採取、殺傷又は損傷(以下「捕獲等」という。)をしてはなりません(法9条)。
ヤンバルクイナの譲渡し等の禁止
ヤンバルクイナは、国内希少野生動物種に該当することから、「希少野生動植物種」(法4条2項)に該当します。希少野生動植物種の個体等は、原則的に「譲渡し等」をしてはなりません(法12条1項)。
ノグチゲラ
文化財保護法
ノグチゲラは、文化財保護法により※、昭和47年に天然記念物に、昭和52年に特別天然記念物に指定されています。
ノグチゲラ保護条例
東村は、ノグチゲラ保護条例を定めています。
条例により、①無断で保護地区内に立ち入ること、②保護地区内において、70デシベル以上の音を発すること、③保護地区内の境界から100メートル以内の地点において、当該保護地区の境界で70デシベル以上となる音を発することなどのノグチゲラの生存を脅かす行為には、罰金が課されますので注意が必要です(ノグチゲラ保護条例8条・同5条、ノグチゲラ保護条例施行規則5条)。
※文化財保護法と天然記念物
※文化財保護法109条1項は、「文部科学大臣は、記念物のうち重要なものを史跡、名勝又は天然記念物(以下「史跡名勝天然記念物」と総称する。)に指定することができる」と定め、同2項は、「文部科学大臣は、前項の規定により指定された史跡名勝天然記念物のうち特に重要なものを特別史跡、特別名勝又は特別天然記念物(以下「特別史跡名勝天然記念物」と総称する。)に指定することができる」と定めています。