最高裁判所が、3月16日TRIPP TRAPP事件2について弁論を開くようです。弁論は、一般公開されますので傍聴することも可能です(基本的に最高裁判所南門で先着順に人数上限まで傍聴可能です。ただし、希望者が多いケースは抽選が行われることもあります。)。
商品形状の法的保護
この事件は、子供用椅子<TRIPP TRAPP>の商品形状について、法律上違法と評価できる水準の模倣であるか否かが争われています。
商品の形状は、商品の機能とデザインを統合して決まる面があります。必要な機能を発揮し得るか否かで相当形状が限定される中で、独自性を見出すために独自のデザインが志向されます。
この商業的なデザインも、一種のビジネス上の表現行為というべきではないかと考えています。こうした企業のビジネス上の表現行為は、しかし、どういった法律あるいは権利として保護されるか混乱も見られます。意匠権、著作権、不正競争防止法2条1項3号の商品形態模倣、そして顕著な特徴を有する商品形状について商品表示に該当すると構成して主張する不正競争防止法2条1項1号、2号違反の問題です。さらに今回の訴訟でも主張されている一般不法行為を合せると事態はより混迷します。
商品形状は、商品デザインとして意匠権を真っ先に想起しますが今回は意匠権侵害は争われていません。また、意匠権に対応する不正競争防止法2条1項3号は、3年の保護期間があります。今回は被告商品の販売開始が2017年ということだったので商品形態模倣も訴訟の俎上に上げられていないようです。
そこで、一審原告は、著作権侵害、不正競争防止法2条1項1号違反、一般不法行為を主張しています。
その中でも、注目されるのは不正競争防止法2条1項1号違反の点です。
このように、かなり混乱している商品表示という一種のビジネス上の表現行為について、最高裁判所において著作権侵害、不正競争防止法2条1項1号違反、一般不法行為という法律構成についてある程度の交通整理がされるのか、期待されます。
特に、私は不正競争防止法2条1項1号違反の点について何らかの基準が示されるなど言及される可能性があると思っていますので、この点について控訴審である令和6年9月25日知的財産高等裁判所判決について確認しておきたいと思います。
知的財産高等裁判所の不正競争防止法2条1項1号違反に関する判示について
不正競争防止法2条1項1号違反で争われているのは、商品形状について著名な商品表示の模倣に当たるかという点です。商品形態模倣の点ではなく顕著に特徴的な商品形状が模倣に当たるかどうかが争われています。

判決書別紙(33頁以下)より抜粋。左側が一審原告商品TRIPPTRAPP、右側が一審被告商品となります。
知財高裁の判示
顕著な特徴について
原告製品(TRIPP TRAPP)の「商品の構成」(構成A〜G)
判決文・別紙「原告製品の形態」において、原告製品全体の形態は以下の 構成A〜G からなると整理されています 
構成A
原告製品は、その大部分が木材から構成されており、その大きさは、高さ約79cm、幅約46cm、奥行き約50cmである。

構成B
原告製品の側面は、床から斜め上向きに平行に伸びた2本の側木と、側木の下側端部から後ろ方向に同じく平行に伸びた2本の脚木から構成されている。

構成C
左右一対の側木及び脚木は、側木の下端が、脚木の前方先端の斜めに切断された端面でのみ結合されて直接床面に接していることによって、約66度の鋭角によってそれぞれ略L字型に接合されており、前後方向から見ていずれも床面に対して垂直で、かつ、互いに平行となるように配置されている。

構成D
2本の脚木の間には、横木が床面と水平に挟み込まれるように設けられており、また、側木の間には、後方縁部分が波状に加工された2枚の板がいずれも床面と水平に固定されている。これらの2枚の板のうち、上方の板は座面として、下方の板は足置きとして、それぞれ用いられる。

構成E
側木の最上部には、2枚の曲線状の背板が挟み込まれるようにして取り付けられている。

構成F
側木には、床面と平行に多数の溝が形成されており、座面板及び足置板はこの溝に挿入されて配置されている。

構成G
側木の下部及び中央部に2本の金属棒が配置されている。

構成と「特徴①〜③」の関係(判決整理)
判決では、上記 構成A〜G を素材として、次のように法的評価用の抽象化がされています。
• 特徴①:
構成B +D=2本脚構造+側木間に水平な座面板・足置板
• 特徴②:
構成C=側木と脚木が約66度で接合された略L字構造
• 特徴③:
構成F(溝構造)=側木内側の溝に座面板・足置板をはめ込む構造
個人的には、構成Fはデザインというより機能的なアイディアとして秀逸であり商品の特徴に大きく影響を与えていると思っています。また、構成Fにより、原告商品は足置板を外した状態でも使用できるため、足置き板をはめた状態も、足置き板を取り外した状態も、原告商品の商品形状としては想起されることになります。
両商品の商品表示としての類似性
知的財産高等裁判所は、二つの椅子のデザインについて商品表示としては同一と評価できないと述べた上で、類似するかを「被告各製品の形態 が、原告らの商品等表示と類似のものに当たるか否かは、取引の実情のもと において、取引者、需要者が、両者の外観、称呼、又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか 否かを基準として判断するのが相当である(最高裁判所昭和57年(オ)第 658号同58年10月7日第二小法廷判決・民集37巻8号1082頁参 照)」として基準を宣明した上で検討しています。
その上で、「本件顕著な特徴を構成している特徴①から特徴③までとの対比において、左右一対の側木の2本脚であり、かつ、 座面板及び足置板が左右一対の側木の間に床面と平行に固定されており(特 徴①)、左右方向から見て、側木が床面から斜めに立ち上がっており、側木 の下端が脚木の前方先端の斜めに切断された端面でのみ結合されて直接床面 5 に接していることによって、側木と脚木が約66度の鋭角による略L字型の 形状を形成している(特徴②)が、側木の内側に溝は形成されておらず、側 木の後方部分に、固定部材と結合してネジ止めするための円形状の穴が多数 形成され、座面板及び足置板を側木の間で支持する支持部材、支持部材を側 木の間において掛け渡された状態で側木に固定する固定部材及びネジ部材を備え、2本の側木後方に設けられた穴と固定部材を結合した状態でネジ部材 を閉めることで、支持部材と固定部材によって側木を前後から挟持して押圧 し、支持部材を側木に固定しており(構成f)、原告らの商品等表示の特徴 ③を備えていないものと認められる」と述べて、構成fの特徴を欠いている点を指摘しています。
「なお、その他の形態上の諸要素を考慮しても、被告各製品は、側木及び脚木からなる2本脚、背板、座面板及び足置板、横木のほかネジ部材、支持部 材、固定部材等から構成され、脚木は一直線であるが、側木は一直線ではな く、側木の上端部分は床面と垂直に折れ曲がっており、2本脚が、正面視で 床面に垂直で相互に平行となるように配置され、側木と脚木の結合部分から 離れた脚木中央部に横木が配置され、中央部に楕円形の穴が形成されている背板は側木の最上部に配置され、座面板と足置板は楕円形の短辺を切り落と したような曲線的形状とされ、ネジ部材、支持部材及び固定部材等により側 木に固定されていることから、被告各製品の形態においては、曲線的な要素 とともに、座面板及び足置板の支持部分に複数の部材が利用され、その安定 性が特徴的となっており、その印象も、原告製品における、直線的な形態が際立ち、洗練されたシンプルでシャープな印象とは異なるものとなっている」として全体的な商品から受ける印象についても一審原告商品と一審被告商品で異なっていると述べています。
「よって、原告製品全体の形態の特徴である本件顕著な特徴について、被告各製品は、これを備えていないものと認められる 」、「したがって、被告各製品は、本件顕著な特徴を備えていないから、取引の 実情の下において、取引者、需要者が、両者の外観、称呼、又は観念に基づ く印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるものということはできない。よって、原告らの商品等表示と被告各製 品の形態が類似すると認めることはできない」として、知的財産高等裁判所は、一審原告の請求を全て棄却しました。
この点について何らかの見直しがあるのか、あるいは、理由を補足して知的財産高等裁判所の結論を維持するのか、最高裁判所の判示が注目されます。







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