バニーガールの衣装の商品形態模倣、著作物性に関する裁判例雑感

東京地判令和3年10月29日・裁判所ウェブサイト掲載は、バニーガール衣装の商品形態の模倣や、著作物性の有無などが争われた事案です。

ポイントは、商品形態模倣の成否と、著作物性の判断の部分かと思いました。

裁判所は、それぞれ、下記のとおり述べて権利侵害を認めませんでした。

裁判所の判断抜粋

争点2(不競法2条1項3号の不正競争行為該当性)について

(1) 原告商品と被告商品の形態の実質同一性
ア 原告商品と被告商品の形態の実質同一性について,原告は,バニーガー ル衣装のパーツごとに比較をすべきであると主張するが,バニーガール衣装は,ボディー,カチューシャ,襟部,カフス部等から構成され,通常, これらがセットとなって販売され(前記前提事実(4)ア),これらが一体と して着用されるのであるから,形態の実質的な同一性は,バニーガール衣 装のセット全体を観察して判断するべきである。

イ 原告が,原告商品と被告商品の共通する特徴として挙げる特徴A,B,D及びEのうち,特徴A及びEは主として縫製等に係る相違点であり,原 告は同特徴を備えるかどうかにより光沢感や横皺の有無・数に差違が生じると主張するが,証拠(甲1~3,15,16,22,31,乙3,4, 6,30,53,54,57等)を総合しても,その差違を外観上識別す ることは困難であり,この点に原告商品と被告商品の形態上の特徴が現れていると認めることはできない。また,特徴B及びDについても,ありふ れた工夫というべきであり,両商品の形態を特徴付ける点であるということはできない。

ウ 他方,証拠(乙6,21,30~36,57,60)によれば,原告商品と被告商品との間には,原告が自認する差違(前記第3の2〔原告の主 張〕(2)ウ(ア)aの1~6)に加え,被告の主張する差違(前記第3の2〔被 告の主張〕(2)イ)が存在することが認められ,このうち,1原告商品では, 股部がハイレグであるのに対し,被告商品では,股部がローレグ気味であ る点,2被告商品の後ろ身頃が,原告商品のそれと比べて,背中を覆う面 積が広い点,3両商品のカチューシャの形状が異なる点は,需要者の目に つきやすい識別可能な形態上の相違点であるということができる。


エ また,被告商品のうち,被告商品IIは胸元にビジュー等の飾りが付いて いる点で原告商品と外観が異なり,被告商品IIIのボディーはその素材がエ ナメルやベロアであり,外観の光沢,質感等が異なる点で原告商品とはそ の形態が異なる。
なお,被告商品原型もボディーの胸元にビジュー又はパールが付いてお り,その形態は原告商品と明らかに相違する。


オ 以上によれば,原告商品と被告商品の形態が原告商品と実質的に同一で あるということはできない。

争点4(著作権侵害の成否)について

原告は,原告商品が「美術工芸品」(著作権法2条2項)に当たると主張するが,バニーガール衣装は接客などの際に着用する衣装であり,実用品にほかならない。

そして,原告が主張する原告商品の特徴は,前記判示のとおり,そ の差違を外観上識別することは困難なものや,ありふれた工夫というべきもの であり,美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているということはできない。 したがって,原告商品は,著作権法2条1項1号の美術の著作物には該当しない。

所感

個人的には、商品形態模倣がポイントだと思いました。ただ、商品販売開始より3年が経過しているためいずれにせよ原告の請求は認められなかったことになります(不競法19条1項5号イ)。

著作物性もあっさり否定されています。

1件のコメント

不競法19条1項5号イについて、地裁は「原告は,被告商品原型について,原告商品の日本国内での販売開始日から3年が経過する前から販売されていたと指摘するが,被告商品原型の形態が原告商品と実質的同一又は類似ということができないのは前記判示のとおりであり,被告商品原型が国内において販売されていたことを示す客観的な証拠もない」と判示しています。

原告は準備書面において、「被告商品原型は、販売のための展示を行っていた」と主張しました。しかし地裁は「原告の主張」の中にその主張を含めず、判断すらしませんでした。
また、地裁では検証や本人尋問の手続きも行われずに判決が出されました。

控訴した知的財産高等裁判所では、地裁で判断されなかった「展示」についての判断を求めました。
そして知財高裁では、検証や本人尋問の手続きも行われました。
それらの事情が考慮されたうえで、裁判長から和解の勧告がなされました。そして2022年7月4日に和解が成立しました。
和解内容は口外しないという条件が付いているため、和解内容についてお知らせすることはできませんが、少なくとも知財高裁では、地裁の判決がそのまま踏襲されたわけではないことをお伝えしておきます。

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